たくさんの人で賑わう川崎駅から車で移動すること約10分の場所に、工場コンビナートが立ち並ぶ場所があります。
昨今では、夜になるとライトアップされて浮かび上がるその姿に、夜景撮影の好きなファンの方々が集まるようになり、時々大型の観光バスが立ち寄るまでになりました。
サークル内の中に、そうした工場夜景に精通したY氏がおりました。
これ幸いと早速拝み倒し、一通りメインスポットを回ってもらいうという企画が実現致しました。反響が良ければ、サークルの活動の一つに組み込んでも良いかな、と考える今日この頃です。

車から眺める湾岸線
Y氏とは新木場で待ち合わせをしました。そこでY氏の車に乗せてもらい、京葉線に沿って湾岸線を車でかっ飛ばします。
川崎にある工場コンビナートまでは約30分程度です。ちょうど日が暮れ始める頃合いで、夕焼けがとても綺麗で思わず見とれていました。カップルにとっては絶好のドライブ日和だな、とぼんやり考えておりました。

どこか懐かしい香り
また移動している間、車中でY氏に工場夜景に対する思いについて聞いてみました。以下対談形式です。
【以下、敬称略】
私:なぜ、Y氏はそれほどまでに工場夜景に情熱を注ぎ込むことができるのですか?
Y氏:私が工場夜景を自分が追い続ける理由として、工場夜景が「現実と仮想世界の境目にあるもの」と思えるからです。つまり、工場は普段東京に住む人にとってはあまり目にすることのない特殊な環境であり、工場の姿そのものがどこかゲームなどに出てくるようなダンジョンに似ているのです。
私:なるほどですな。
———以上、対談終わり。
その話を聞いて、私はそのどこか浮世離れした工場を早く写真に撮りたいと気持ちが急いていたわけです。

気分は鉄コン筋クリート!
まずはド定番の千鳥町(らしいです)からY氏に案内いただきました。
ちょうど夕日がくれなずむ時間帯、オレンジ色に染まる工場はどこか幻想的でした。最初、Y氏に車を降ろしてもらった瞬間、ときめきが止まりませんでした。おそらく私はその瞬間、工場のどこか人を寄せ付けず、勇ましい立ち姿に恋してしまったのだと思います。(大げさな…)
どこを見渡しても、どこか郷愁的な懐かしい気持ちにさせてくれる景色が広がっています。僕がまだ小学生だった頃、こんなところが近くにあったら毎日冒険に出かけていたんだろうな。(そして結末は、母親にこっぴどく叱られる。)
貨物ヤードに車をとめて日本合成樹脂、フレキシコーカー俯瞰スポットまで軽く散歩しました。なおY氏曰く、以前あった平屋(全体を眺めるために最適な建物だったようです)が跡形もなくてしまっていたそうで。しばし愕然としておりました。
どうやら工場地帯は、建物の移り変わりが激しいみたいです。どうせならそこから全体を見渡して広角的に撮影をしたかったな、と思った今日この頃。もう少し早く来たかったです。

沈む夕焼けにココロオドル
我々は夕日を背景にしばし撮影し、しばらくその光景に見とれておりました。
そういえば、ちょっと蛇足となりますけど私の尊敬する漫画の一つに松本大洋先生作の「鉄コン筋クリート」があります。義理人情とヤクザが蔓延る町・宝街。そこに住む<ネコ>と呼ばれる少年・クロとシロが、都市開発で変わりゆく街を縦横無限に飛び回る姿がとても印象的。
そんな「鉄コン筋クリート」の世界観が、不思議と川崎の街に重なり合う気がするのです。
どこか冷徹な印象を放つ金属製の工場の上をシロとクロが飛び回るという光景が浮かび上がります。なぜだか無性に漫画を再度読み直したくなりました 笑
読んだことない方は、是非とも読んでみてね!個人的には映画も結構好きです。(アジカンの歌聞きたい…)

マジックアワー
次に我々が向かった先は、千鳥橋から眺める水江運河です。
丁度西向きの場所で、美しいマジックアワーと工場夜景のコラボが見られる幻想的な場所。Y氏的には、川崎で最も好きな場所。工場夜景としては人気スポットの一つのようで、我々が到着した時には2人くらいすでに先客がおりました。
橋の上で、いざ持参した三脚を立てて撮影に挑みます。しばらく撮影を続けていたところで、ふとY氏に声をかけられます。再び対談形式となります。
【以下、敬称略】
Y氏:Kさん、今どうやって写真撮られています?
私:(しばし考えこむ)いや、普通に撮ってますよ。AFにしてピント合わせて、シャッター切ってます。
Y氏:ふむ、実は工場夜景を撮るにはコツがあります。以下の手順に沿って撮影してください。
手順① :AFをやめてMFに切り替える。(レンズ・本体どちらも)
手順② :モードをマニュアルに切り替える。(絞りF8.0くらい、スピード15秒程度?)
手順③ :撮りたい構図が決まったら、背面にある画面で拡大。
手順④ :奥にある光が、一番小さな丸になるまでピントを手動で合わせる。
私:なるほどですな。
———以上、対談終わり。
目からウロコでした。(基本私は、絞り重視でAFで撮影していますからね。)
Y氏に教えてもらってから自ら実践してみます。…ところが!
撮影できた写真を見てみるとどうも、ぶれているような気がします。Y氏に確認してみると、どうやら橋をダンプカーが通るとその振動で写真がブレてしまうらしいです…
結構運によるところも大きいではないか!!!
というわけでしばらく根気強く長時間露光にて撮影を続けます。まあ結果として何枚かは納得のいく写真が何枚か撮ることができました。(まだまだこれから修行が必要な模様)
するとここでまた問題が…どうやら時間が経つにつれて猛烈に寒さに襲われるようになったのです!撮影時、2月の中旬で暦上は春ではあると言えまだ寒さが残っている時期でありました。
そんなわけで我々はその場所を離れて次の目的地に向かう時缶コーヒー片手に次の目的地へ。

ちょっと残念…
次に向かった先は、水江町から眺めることのできる東亜石油。
ここでは昔鉄道が走っていたそうですが、なんといつの間にか撤去されてしまっていたようです。態度にあまり出ていませんでしたが、だいぶY氏はショックを受けていた模様です。
気をとり直し、撮影をすることにしたわけですが、また次のハプニングが。なんといつもであれば工場の前には何もなく、吹き抜けで撮影をすることができるようなのですが、私たちが行った時には数多くの船が止まり景観を損ねておりました。その時、Y氏はどこか苦虫をつぶすような思い出その景色を眺めておりました。
結局撮影することを諦めたY氏は、私に彼が持ってきた超望遠単焦点&柵越え三脚を貸してくれました。

ごちゃっとした感じが好き。
なるほど、それだと私が持ってきた標準レンズ(70mm-140mm)とはまた違った絵が撮れそうです。
しかしこの時、辺りはかなり冷え込んでおり、もう私がシャッターを押す時にもブルブル震えだす始末でした。本当に工場夜景を舐めていました。数時間前に戻るなら、なぜそんな薄着をして出かけるのかと自分自身を叱ってやりたいです。
寒さに震える自分を叱りつけながら、次なる目的地を目指します。

夜の路線ってなんか好き
私たちは最初に降り立った場所である、千鳥町に戻りました。
夕方の時に来た時とは違って、説明しにくいですけど雰囲気が異なります。辺りは完全に工場の音だけで、静謐な感じがしました。
人間の作ったものってこんなに綺麗なんだ、と変に感心してました。特に線路と一緒に撮った写真は個人的にとても好きです。
風が吹き抜ける感じとか、どこかそのままロボットになって動き出してしまいそう 笑

ゲートをくぐると…
最後に我々が向かった先は、浮島町にあるJXTGの工場です。(もしご存じない方はググってみてね!)
到着して思ったことは、どこかおどろおどろしい雰囲気の漂う工場だということです。まさしくゲートをくぐって中に入ると、ダンジョンのラスボスが潜んでいるような…笑
益々寒さが増しておりましたが、そんなの関係ねえ!くらいの気持ちで夢中でシャッターを切っていました。
とはいえ、結局10分くらい経った頃には体力的に疲弊していた為車の中に戻りました。Y氏はというと、究極の一枚を求めて車のボンネットの上に三脚立て掛けて写真を撮るという荒技に出ていました。なんとも勇ましい。
二人とも次の日仕事だったので、今日はここまで。個人的には新たな写真の世界を見せてもらった1日でした。是非ともどこかで活動の一つに組み込めたらな、と思っています。
【本日の教訓】
・工場夜景の際は、絶対に厚着する!(本当にびっくりするくらい寒い)
・工場夜景を撮影時は、マニュアルで操作する。
以上でございます。ちなみに工場夜景を撮る際には下記サイトを参考にするのが良さそうですね。
★工場夜景ガイド https://yakei.tw
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