

JR中央本線武蔵小金井駅からバスで10分ほど行くと、かつて東京にあった歴史建造物をぎゅっと集めた場所があります。その名も、「江戸東京たてもの園」。この場所は、1993年江戸東京博物館の分館として開設されました。目的としては、現地保存が不可能な文化価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示するとともに、貴重な文化遺産として時代に継承することです。
今では失われてしまった歴史的遺産が眠るこの場所で、NOSTROVIA+の通算23回目となる活動を行いました。当日は、目の覚めるような青空が晴れ渡っておりました。集合場所に集まったのは、約50人。くじ引きをして、8つの班に分かれての行動となりました。
もう今回の活動では、新規の人たちはおらずみんな顔なじみのメンバーばかりでの構成。とはいえ、人数も人数なのでグループ単位でご飯を食べた後に軽く自己紹介を交えつつ、各々「江戸東京たてもの園」を目指します。因みに、私たちのグループは、「七彩」というお蕎麦屋さんでお昼を食べた後に折角なのでバスでは向かわずに散歩と撮影を程良くしつつ現地へ行きました。


江戸東京たてもの園は、中に入ってみるとわかりますが思ったよりもかなり広い場所です。エリアとしては、西・中央・東の3つのゾーンから成ります。その中でも特に、東ゾーンは私個人としてはすごくオススメの場所です。
昨年ちょうど同じ時期に企画した際、下見をした時に「宝湯」が改修していたので急遽違う場所に変えてしまったくらい、すごく思い入れが強いです。東ゾーンには交番や今ではあまり見かけなくなってしまった都電7500形、旅館や鍵屋など見所がたくさんあります。この記事をご覧になられている方、もし行くことを検討されているなら東ゾーンから回ることをお勧めします。ボヤボヤしていると、本当にあっという間に時が流れてしまうので。それだけ見所が多いし、撮影する人にとってはかなり良い場所です。

これまでアップした写真を見て、皆様何か気づかれた方もいるでしょうか?実は今回あげている写真全部、フィルムカメラで撮影された写真なのです。本活動では、私自身の強い思いもあって敢えて参加したメンバーには事前に用意してもらった「写ルンです」で撮った写真をあげてもらうようにしました。
何だか「フィルムカメラ×江戸東京たてもの園」って凄く相性が良い気がしております。非常にシンプルな仕組みの「写ルンです」は、一時期デジタルカメラの隆盛によりその存在自体が危ぶまれましたが、今では再び若い人たちを中心に再ブームが到来している模様です。たまにコンビニでも見かけますよね。


私の父親の影響かもしれません。小さい頃から子供心にどこかくすぐったくなるような、そんな昭和の街並みを再現したテーマパークによく両親に連れられて行かされました。あの頃の記憶は、朧げではありますが今でも根強く残っています。なんだかどこかワクワクするような懐かしくなるようなそんな気持ち。
誰かに、好きな季節はなんですかと聞かれたら私は必ずや「夏」と答えます。その理由はとてもシンプルで、夏祭りがあるから。あの出店が立ち並ぶ姿やどこからか漂ってくる甘い匂い。そういったものは全て、私のこれまでの感覚と強く結びついています。それが、きっと私が写真を撮る上での原点です。どこか懐かしさを伴った景色が、とても好きです。

ギリギリ私は平成世代に生まれ、私の父の世代や団塊世代がよく懐かしむような昭和の文化には直接には触れたことがありません。それでも、私の記憶と強く結びついて何となく行動の指針になっている気がします。写真には答えなんてものはありません。だから表現の自由は皆平等に与えられており、それが人を惹きつける理由になっているのかもしれません。


趣味嗜好が多様化した現代では、昔のように1つのことにとらわれることなく、自分がこれだ!と思うものをとことん探すことのできる便利な世の中になったかと思います。一方で、あまりにも情報が溢れすぎて何が自分のしたいことかわからない…という人が増えているみたいです。要は、多様化した弊害で自分が何者かわからなくなってしまったのかも知れません。
よくあの頃は良かった、という大人たちがいます。彼らは自分たちが育った昭和の世界を懐かしみ、原点回帰じゃないけどそのイメージを追い求めているような気がしています。多分、何となくその頃は今よりもずっと他者との結びつきが強かったのではないかと思います。その分窮屈な部分も必ずあったわけだけど、きっとそれはそれで平和な繋がりだったのではないかと想像できます。

私は今だから思いますけど、このサークルを作った最初の理由はSNSが発展したこの世の中で少しでも希薄な関係から抜け出したい、という思いがあったような気がします。これまで生きてきた中で一番ハマった写真で、誰か同じように思いを共有して話すことのできる空間を作りたかったのです。


そして今回は、改めて原点回帰をしたい、と考えて臨んだ活動でした。自分としても、また写真の面白さを再発見したい、そんな風に考えてました。なので実は参加した人たちには、「写ルンです」で撮った写真を共有して鑑賞しよう!という制限を設けました。まあ多少窮屈な思いをされた方もいたかと思いますが、結果的に私としてはみんなが写真と向き合う姿勢を見ることができて、良かった。
「写ルンです」は絞りもシャッタースピードも何もありません。あるのはシャッターとフラッシュのみ。とてもシンプルな構成ですけど、それだけに撮り手のセンスがより試されます。みんなで同じ場所を撮っていても、十人十色の味わいがあって、私自身勉強になりました。
なんて、また私が思ったことをダラダラと述べてしまいましたが、やっぱり個人的にはフィルムっていいな、と思った瞬間。デジタルでなかなか表現しづらいフィルムならではの写りの良さもありますけど、それ以上に1枚1枚大切に撮ることができること、それが一番大きい気がします。

今ではデジタルが普及してしまって、どうしてもフィルムカメラは隅に追いやられる存在。それでも若い人たちを中心にフィルムブームが再来しているのは、デジタルでは決して再現することのできない色の深みみたいなところを表現できるところにあるように感じています。やっぱりInstagramで見ると、フィルムの写真は素晴らしいものが多い。その境地にたどり着きたいと思いながら、私は今でもカメラを構え続けています。
最後に、今回の活動における集合写真を載せます。これだけはデジタルなんですけどね。

これからの活動でも、いろんな人が思いを込めて撮影した写真を見て、自分自身も写真もっと突き詰めていきたい。1つとして同じ解がない世界だからこそ、自分の芯を持って、向き合っていきたいですよね。久々に真面目なことを書いてしまいました。この記事を読んでいる人にとって、写真を撮ることがもっと楽しくなることを祈って。
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